2025/03/09(日)「まほー使い」のはなし

貴方は、まだ忘れることができずにいるのですか
- Addled egg, hatching egg / @twofour

「ここに来るのも久しぶりだなあ」
日付が変わって、今日。私は大きめのキャリーケースを引きずり、肩に愛用のカバンを下げてある塔の前に立っていた。
浮世から少し離れた所にある灰色の塔。
去年、来たいとは思ってたものの結局来れずじまいで、
今年訪れる事になったのだけど今も元気なのだろうかと思い、塔の門を叩いた。
「ごめんくださいー」
そう言うと、一匹の黒猫が門番代わりに挨拶をしてくる。
「ぉ、久しぶりだな。いつ以来か?」
「こっちは色々と大変でね...って積もる話は後でいいか」
軽い挨拶はさておいて...という前に向こうから本題を切り出してきた。
「今日は何の日か知っての事だろ」
そう、去年来たかった理由。『この日』に来たかった理由の話だ。
「知ってるよ、だから来たの」
知らない人には多分、これだけじゃ解らないような会話。
私たちだけだからこそ解る暗号のようなやり取り。これだけで十分だった。
「あいつなら...おおよその予想通りふて....っておい」
いつもの文言の途中で私の背後の気配に気づいたのだろう、
黒猫は驚いたような表情をした。
「まあ、こういう事だから」と私はにやにやしながら続けて
「それじゃあ案内してくれる?」

塔のつくりは非常に簡単と言うか、
所謂ライフラインは完備されていて、
私が常駐するなら...とは言ったものの、
ここだとこのブログの更新は出来ないなと思ったので、
やはり自宅が一番だとなんともな結論はさておいて。
目的地へとついた。

塔の中程の小部屋、寝室の前の壁をノックするようにたたく。
中の子は当然ながら動かない...と言うより、瞑想してた。
事前に不貞腐れてるとは聴いていたが、違ってたようだ。
とりあえず部屋に入ろうとすると少し目を開けてこちらをうかがう。
幼いながら長い黒髪が似合う子だなあとしみじみと思ってると、
少し少女は会釈をして私に問うてきた。
「えと、今日は...」
玄関先でも聞かれた質問だ。
これにはやはり玄関先と同じく
「知ってるよ、だから来たの」と返す。
そう言い返すと彼女は
「だったらなんで...!」と徐々に涙目になりながら問い返すが、
それすら想定内だった。だから次の言葉が自然と出る
「あれから長い月日が経った、もうとっくに最初に*帰った*頃に生まれた子はもう成人だってしてる」
冷静に言葉を切り返すと、ふと少女から涙止まり私の次の言葉を待っている
「当時、交流あった人の中には、灰になった人もロストした人だっているかもしれない、
だから私たちがこうやって思い出してあげるのも大切じゃないのかな?って」
と言いながら手にしてたキャリーケースに手をかけた。
中身には色々と嗜好品...と言うか、近所のスーパーとかで仕入れてきたお菓子がぎっちし詰まってる。
「だからこそこうやって...話せる人に会いにきた...」
引き続き、キャリーケースから適当なお菓子とか紅茶キットとかを出し続け
「...と言うと思ってた?」
の一言で予め隠してた子を呼び出す。

「いつまで待たせるのーとっくにお腹ペコペコなんですけどー」
半分だらけた表情で、その子は私にそう言った。
こちらは銀髪にショートカットで先が二つに別れてる特徴的な黒い帽子をかぶった子だ。
「攻撃は最大の防御って言うでしょ?先制攻撃でハイマスターに襲われたら一般冒険者達は即残念じゃない」
「確かに!」
等と話しているうちに今度は黒髪の子の表情が驚きに代わっていく、
そりゃそうだ。今日はこういう日だから。
「...本人ですよね」
驚きの表情のまま、黒髪の子は銀髪の子に問いかける。
「本物だよ?そりゃまあ、昔とは結構おしゃれ?するようになったけど、体型は相変わらずだね」
銀髪の子は少し笑いながら答えた。
お互い挨拶は済んだところだ。募る話だけで一晩は過ごせるだろう。
お湯だの、茶器などの準備は皆でするとして、鞄から諸々のデータが詰め込んであるHDDを取り出し私は言った。
「つぐなちゃん、まゆらちゃん、それじゃあ女子会始めるよ!」

3/9は「まほー使い」の日

...とまあ、時には過去に振り返ってみるといいますか、
宛櫛だと今と過去の出来事が並行的に感じられてあれ。
リメイクがきっと悪いんだ。わらい。

...3/9は色々とありますが、2001年3月9日に「何かwizまゆら」が公開され、
その一年後、2002年3月9日に魔界に帰った日です。
と書いて「そういえば元々初回は1年間限定のプロジェクトだったな」と何の資料も見ずに思い出すとかなんなんだ。
当時から結構時間は過ぎますが、この適当な雑文を見た人が其の頃を思い出してくれればなにより。